最近の税務調査について思ったことを書きます。
〇無申告者に対する税務署からの接触について
無申告の期間があったかたから、最近ご相談のあった事例として以下のようなものがあり、税務署からの接触としてこのようなパターンがあることがわかります。
①税務署に呼び出されて、その後何度か税務署に通い申告書を提出した。
(その後、幣事務所にご相談いただき顧問契約を締結しました。)
②無予告でいきなり税務職員が自宅に税務調査に来た。
(その数日後、幣事務所にご相談いただき税務調査の立会いから関与しました。)
③無予告でいきなり税務職員が自宅に来て、申告書の提出のしょうようがあった。
(このかたは既に幣事務所に申告書の提出の依頼をされていたため、「税理士に依頼中です。」と言ったら職員は帰ったそうです。税務調査が目的で来た場合は、通常その場でこちらに連絡がありますので、税務調査が目的で来たのではなく本当にしょうように来ただけのようです。その後も税務署からはこちらに連絡はありませんでした。レアケースだと思います。)
なんとなくですが、無申告者への税務調査が増えているような気がします。コロナ禍により税務調査で外に出ることができない期間がありましたので、その間に無申告者などの資料を収集して、より効率よく調査税額を増やそうとして必然的にそうなっているのかもしれません。
より効率よく税務調査での調査額を増やそうという動きがあるのは確実で、それは令和3年分の所得税の確定申告書にも見て取れます。
この年分で申告書の書式に一部変更があり、注目すべきなのは2点あります。
1点目は、事業所得の収入金額の記載欄の横に、記帳・帳簿の保存状況について5段階により記号で記入することとなりました。
記号「1」~「3」は正規の簿記の原則に従って記帳していて、帳簿も備え付けているものです。「4」は簡易な方法で記帳している場合で、「5」は「1」~「4」に該当しない場合(記帳の仕方がわからない場合を含む)となっています。
「1」~「3」は正規の簿記の原則により帳簿を作成しているので、青色申告特別控除額の65万円の対象となります。(税務調査により対象外であると認められた場合は10万円まで否認されます。)正規の簿記の原則に従って申告していると申告書で宣言していますので、不正があった場合は今まで以上に重加算税の対象とされるのではないでしょうか。宣言している以上、「(正規の簿記の原則により申告しないといけないとは)知りませんでした。」では済まされない可能性があります。
「4」と記載した場合は複式簿記で記帳していないことになりますので、もし青色申告特別控除額を65万円と記載した場合は、10万円に是正されることになります。
そして「5」と記載した場合は、帳簿を作成していない、あるいは記帳の仕方がわからないと宣言することになりますので、税務調査が来る可能性が高いと思われます。所得や税額が少なければあまり関係ないかもしれませんが、多い場合は税務調査等の可能性は高いと言えます。また、「5」を記載したかたは税理士が関与していないでしょうから、その点からも可能性は高いでしょう。
確定申告書の変更のもう1点は、雑所得について、収入金額の横の欄に暗号資産取引による収入がある場合は、記号によりその旨を記載することとなりました。
暗号資産などの利益に対する課税については、少し前から税務署が力を入れようとしているなという動きがありました。
次回はその点について書きたいと思います。